最近、ホウ砂(ほうしゃ)を摂取することが健康に良いという情報をネット上で見かけます。
「ほんとに⁉試してみようかな」
と、思って少し検索してみると、、、
「ホウ砂には毒性があります」
という指摘もあり、安全性について心配になってしまいました。
ここでいつもの私なら、面倒になってしまいそれ以上調べず、試さず、忘れ去っていくのですが、AMANOJACKをとおしてみなさんに健康情報をお伝えするためには、
「まずは自分がしっかり知らねば!」
と、きちんと調べてみました。
ホウ砂についての判断材料になれば幸いです。
そもそもホウ砂とは
ホウ砂とは、自然に存在する鉱物(ホウ酸塩鉱物)の一種で、四ほう酸ナトリウムやBorax(ボラックス)とも呼ばれます。天然のホウ酸ナトリウム鉱石を精製したものをホウ砂と呼びます。
水に溶けやすく、アルカリ性が高いので、重曹と似た用途に使われます。掃除や洗濯などに活用できるほか、スライムの手作りなどにも最近はよく使われています。パッケージにスライムの絵が書かれた商品もあるくらいです。また、ホウ砂は鉱物なので、生物分解の必要がなく、環境に優しいと言われています。水溶液になると弱アルカリ性となり、洗浄作用・消毒作用があるため洗剤や防腐剤などに使われています。
ホウ酸やホウ素との違い
ホウ酸
ホウ酸は、ホウ砂と同じくホウ素を含む別の物質のことです。つまり、ホウ砂もホウ酸もホウ素が含まれている別のもの、ということです。ホウ酸は、ホウ素と酸素から成る化合物であり、ゴキブリ駆除に用いられるホウ酸ダンゴの名前でよく知られています。
ホウ素
ホウ素(Boron)は元素記号「B」で表される元素で、ガラスを作る際によく用いられています。植物にとっては必須元素である反面、高濃度の土壌では害が発生するようです。また、昆虫に対しては強い毒性を示します。ヒトを含む動物に対しては食塩と同程度の無毒な物質と考えられています。ホウ素は、ホウ砂、ホウ酸等の化合物の形態で自然界に存在します。
ホウ素について専門家の見解は
National Institutes of Health(アメリカ国立衛生研究所)のFact Sheet for Health Professionals(医療従事者向けファクトシート)※1 にはホウ素について次の引用文のように書かれています。
なお、各種数値については、ホウ砂ではなく、ホウ砂に含まれる元素「ホウ素」についての数値である点に注意してください。ホウ砂100mgにはホウ素が約11.5mg含まれています。ホウ素の重量に約8.7倍を掛けた数値がホウ砂の状態でのだいたいの重量になります。
はじめに
ホウ素は微量元素で、多くの食品に天然に含まれ、栄養補助食品としても利用できる。植物細胞壁の構造成分であり、植物の成長、受粉、種子形成に必要である。
ホウ素の明確な生物学的機能はまだ特定されていないため、ホウ素はヒトの必須栄養素には分類されていない。
しかし、生殖と発育、カルシウム代謝、骨形成、脳機能、インスリンとエネルギー基質代謝、免疫、ステロイドホルモン(ビタミンDとエストロゲンを含む)の機能などに有益な影響を及ぼす可能性がある。
(中略)
推奨摂取量
(中略)
世界保健機関(WHO)は、成人のホウ素摂取量の「許容可能な安全範囲」を1~13mg/日と推定している。(中略)
ホウ素と健康
このセクションでは、ホウ素が関与している可能性のある3つの健康分野に焦点を当てる:変形性関節症、骨の健康、および癌。
変形性関節症
観察的証拠とヒトを対象とした少数の小規模臨床研究からの知見とを総合すると、ホウ素は、おそらく炎症を抑制することによって、変形性関節症の症状の軽減に役立つ可能性があることが示唆される。
1日あたり6mgのホウ素を8週間摂取した場合とプラセボを摂取した場合を比較した小規模なパイロット試験では、75歳未満の20人の参加者(平均年齢は約65歳)において、サプリメントが変形性関節症の症状を軽減した。軽度から中等度または重度の変形性関節症患者20人を対象とした別の8週間の研究では、軽度から中等度の変形性関節症ではフルクトホウ酸カルシウムとして1日6mgのホウ素、重度の疾患では1日12mgのホウ素を摂取することで、関節の硬直と疼痛に対するイブプロフェンの使用が減少し、可動性と柔軟性が向上することが明らかになった。しかし、この研究は非常に小規模であり、盲検化またはプラセボ対照ではなかった。
その後の二重盲検プラセボ対照試験では、59~68歳の変形性関節症患者60人を対象に、1.5、3、または6mg/日のホウ素(フルクトホウ酸カルシウムとして)を2週間摂取させ、炎症性バイオマーカー(C反応性タンパク質やフィブリノゲンなど)に及ぼす影響を検討した [30] 。サプリメントは、炎症マーカーを有意に減少させた。別の二重盲検プラセボ対照臨床試験では、2週間にわたり6mg/日のホウ素(フルクトホウ酸カルシウムとして)を補給したところ、膝の不快感を自己申告した成人60人(平均年齢50歳)において、膝の不快感が有意に減少した[34]。
これらの所見は、ホウ素、特にフルクトホウ酸カルシウムとしてのホウ素が、変形性関節症の症状の軽減に有望である可能性を示唆しているが、さらなる対照試験による確認が必要である。
骨の健康
ホウ素は、おそらく骨芽細胞および/または破骨細胞の活性に影響を与えたり、血清ステロイドホルモン値やカルシウム代謝に影響を与えたりすることにより、骨の成長と形成に重要である可能性がある。動物実験によると、ホウ素欠乏は四肢の発育異常;成長板の成熟遅延;骨強度、骨体積率、海綿体の厚さの減少を引き起こす。
ホウ素の補給を受けている動物と、通常または少量のホウ素を摂取している動物を比較すると、補給によって骨強度のいくつかの指標が改善されることが示されている。しかし、134人の韓国人女性(平均年齢41歳)を対象とした観察研究では、ホウ素の摂取量(平均0.9mg/日)は、腰椎や大腿骨領域の骨密度と有意な相関は認められなかった。
17人の女性アスリート(平均年齢19.8歳)と11人の座りがちな女性(平均年齢20.3歳)を対象としたプラセボ対照臨床試験では、3mg/日のホウ素サプリメントを10ヵ月間摂取することで、座りがちな女性の血清リン濃度が有意に低下し、血清マグネシウム濃度が上昇した。しかし、この研究では、補充は骨密度に直接影響しなかった。
ホウ素の補給がヒトの骨の健康に影響を及ぼすかどうかについては、さらなる研究が必要である。
癌
予備的な証拠から、食事からのホウ素摂取ががんリスクに影響を及ぼす可能性が示唆されている。いくつかの観察研究では、ホウ素摂取量が男性では前立腺がんリスクと、女性では肺がんおよび子宮頸がんリスクと逆相関することが明らかにされている。例えば、肺がんの女性763人と健常女性838人を対象とした症例対照研究では、ホウ素摂取量が最低四分位値(0.78mg/日未満)の人は、最高四分位値(1.25mg/日以上)の人の約2倍の肺がんリスクを有していた。トルコで実施された観察研究では、前立腺がんリスクの2つの基準、前立腺の大きさと前立腺特異抗原(PSA)値が評価された。ホウ素の摂取量が多い男性(約6mg/日)は、摂取量が少ない男性(0.64~0.88mg/日)に比べて前立腺が有意に小さかった。しかしながら、PSA値は両群間で有意差はみられなかった。
がんの予防または治療に対するホウ素の効果を評価した臨床試験はない。がんに対するホウ素の効果があるとすれば、それを理解するためにはさらなる研究が必要である。
過剰ホウ素による健康リスク
食品や水からホウ素を多量に摂取した場合の悪影響に関するデータはない。
一部の家庭用洗浄剤や殺虫剤に含まれるホウ酸またはホウ砂(ホウ酸ナトリウム)の誤飲に関連する症状には、吐き気、胃腸不快感、嘔吐、下痢、皮膚紅潮、発疹、興奮、痙攣、抑うつ、血管虚脱などがある。誤ってホウ素を摂取した人の摂取量は18~9,713mgで、ほとんどが6歳未満の子供であった。ホウ素中毒はまた、頭痛、低体温、落ち着きのなさ、倦怠感、腎障害、皮膚炎、脱毛症、食欲不振、消化不良を引き起こすことがある。乳児では、ホウ素の高摂取により貧血、痙攣、紅斑、薄毛が引き起こされる。極めて高用量のホウ素は致死的となる可能性があり、例えば成人では15,000~20,000mgで死に至ることがある。
FNB(Food and Nutrition Board)は、動物における生殖および発育への影響に関連するレベルに基づいて、健康な個体に対するホウ素の上限摂取量を設定した。
年齢 男性 女性 妊娠 授乳 〜生後6ヶ月 設定なし 設定なし 7〜12ヶ月 設定なし 設定なし 1〜3歳 3mg 3mg 4〜8歳 6mg 6mg 9〜13歳 11mg 11mg 14〜18歳 17mg 17mg 17mg 17mg 19歳〜 20mg 20mg 20mg 20mg ホウ素の耐容上限摂取量 (中略)
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参考:
National Institutes of Health – Fact Sheet for Health Professionals – Boron
※1 National Institutes of Health – Fact Sheet for Health Professionals – Boron
ホウ砂の毒性についてのエビデンス
厚生労働省の安全データシート※2 によると、ホウ砂の経口摂取での有害性については、分類上最も有害性が低い「GHS分類: 区分外」となっています。
「区分外(平成30年以降は「区分に該当しない」へ表現変更)」とは、”GHS 分類を行うのに十分な情報が得られており、分類を行った結果、JIS で規定する危険有害性区分のいずれの区分にも該当しない場合(JIS では採用していない国連 GHS 急性毒性区分 5 に該当することを示すデータがあり、区分 1 から区分 4 には該当しない場合なども含む)※4 ”を意味します。
さらに、同安全データシートには、GHS分類が区分外に分類されている根拠として、ラットのLD50値として、3,493 mg/kgとの報告があると記載されています。LD50とは、ある一定の条件下で動物に試験物質を投与した場合に、動物の半数を死亡させる試験物質の量です。つまり、ラットの場合、体重1kgあたりの換算で約3.5gのホウ砂を一度に口から摂取すると半分が死んでしまったという意味です。ラットと人間では必ず同じ結果になるというわけではないと思いますが、体重60kgの人間に置き換えて計算すると、一度に約210gのホウ砂を口にすると50%の確率で死んでしまうということです。
この210gという数字が多いのか少ないのか、比較対象があればわかりやすいと思い、身近な「食塩」の有毒性についても調べてみました。
大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)センターの塩・醤油の中毒情報※5 に記載されているデータによると、食塩の主成分である塩化ナトリウムのヒト推定致死量は体重1kgあたり0.5~5gとされています。さきほどと同じように体重60kgに換算して考えると、一度に30〜300gの食塩を摂取すると人は死んでしまう可能性があるということです。最小値の30gといえども、海水を大量に飲んでしまうことなどがなければ、なかなか一度に摂取することはないであろう量とはいえ、思ったよりも少量の塩でも死につながる可能性があることに驚きました。
このように、食塩に関する数値と比較すると、日常的に口にしている食塩と同程度の量のホウ砂であれば、摂取したからといって死に至ることはもちろんのこと、大きな健康被害が出ることもないのではないかとの判断に私は至りました。
参考:
※2 厚生労働省 – 職場のあんぜんサイト – 安全データシート – 四ホウ酸ナトリウム(十水和物)(別名:ホウ砂)
※3 厚生労働省 – 職場のあんぜんサイト – GHSとは
※4 経済産業省 – 政府向けGHS分類ガイダンス(令和3年度改訂版(Ver2.1))
※5 大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)センター – 中毒時の対応に関する情報(中毒情報)について
結論
成人でホウ砂を1日に約174mg(ホウ素20mg/日)以内の経口摂取であれば、健康被害が出る可能性は低く、健康によい影響が得られる可能性があります。
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